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2011年11月

2011/11/09

『吸血鬼と精神分析』と25年前の座談会

矢吹駆シリーズの第六作、『吸血鬼と精神分析』を読んでいて頭によぎったことをメモしておきます。

『吸血鬼と精神分析』22ページから。

高校(リセ)時代からの親友バルベスが、「ナディアって、いい名前じゃないですか。これで決まりですよ」と口を挟んできたのだ。妻と親友の連合軍に押し切られたもガールだが、いまではナディアにしてよかったっと思っている。早くには母親を失うという不幸を体験したのに、さほどの問題もなく今日まで育ってきたのは、希望(ナディア)という名前の娘だからではないか。

『ナジャ』のヒロインは自分の名前の由来を「ロシア語で希望という言葉のはじまりだから」とかたる。しかし、どうしてナディア(NADIA)ナジャ(NADJA)に変わってしまったのだろう。言語感覚に鋭敏なシュルレアリストだから、IをJに置き換えたのだろうか。

一方、1986年に出た『SFの本』9号には「『バイイバイ、エンジェル』から『機械じかけの夢』まで」と題して笠井潔×野阿梓×巽孝之の座談会が載っています(対談の収録は1984年の3月とのこと)。そこではこんなお話が――

笠井
ネーミングにこる作家というのがいるでしょう。僕も多少はまねをして凝ったことがある。
ネーミングにですか。
笠井
『バイバイ、エンジェル』に出てくる。
矢吹駆ですか。
笠井
種明かし用に十個くらい頭の中にある。たとえばナディアというのはNadiaですね。ところでブルトンにNadjaというのがある。小文字のjからiをとるとuになります。フローベールはそのヒロインは私だというわけだが、僕の場合には、それはあなた(you)だというメッセージがあると読んでもらっていい。その手がかりとして、作中にはブルトンの名前が出てきます。

あとは作中でナディアが語る言葉の意味がわからなくなる不思議な体験的な話も鼎談の中に出てきたり。

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